第14回目は、新メンバーが参加!自分の成功のことしか頭にない自己中エゴ男と、怒りを覚えるカノジョたちを3組のカップルで。「ジャズドラマー」を「俳優」に置き換え、カメリハ・オリジナル「セッション」スタート! (左から)俳優として成功したいエゴ男:じんくん・のぞみくん・まさしくん (左から)その彼女:みさきちゃん・ひさえさん・ゆうみちゃん 泣く子もだまるスパルタ映画「セッション」。ジャズドラマーとして成功したい主人公が、狂気のレッスンに追い込まれながら、成功への執念で、カノジョに一方的な別れ話を切り出すシーンです。 久しぶりに会ったのに、思いもよらない別れ話をされたカノジョの反応は・・・。 3組のカップル、それぞれ持ち前の個性と年齢を生かしながら、演じてくれました。 それでは、肩慣らしも兼ね、撮ってみよう。 ●じんくん&みさきちゃん Take1 初めて参加する3人のために、こんな感じという、お手本を見せてもらいました。 じんくんとみさきちゃんは、自分たちで映像を見て、自分たちで修正するので、あえて何か言うことはございません。 どう修正したか、完成版は、大ラスで! →ひっぱる 続いては、のぞみくんと、ひさえさん。 初参加ののぞみくんは、いきなりベテランひさえさんに当たりました。(じゃんけんでこうなった。笑) 初撮影で、親子ほど年の差のあるひさえさんが、カノジョになったのぞみくん、 そりゃやりづらいわ。笑。ちょこっとヒント。 「グリーンバックの合成撮影などでは、そこにいないだれかを相手に演じることもあります。 相手はCGであとから合成されるから。相手が目の前に見えてるだけマシ。 あとは、想像力を働かせてみよう。」 ということで、のぞみくんには、わがまま放題の年下カレシというキャラを作ってもらいました。 一方、ひさえさんは、相手が誰だろうと、何歳役だろうと、全然へっちゃらですので、 35歳ぐらいの、年上カノジョ設定にしてもらいました。 (グリーンバックも大変だけど、舞台の女優さんは、実年齢のままで、子ども役、男性役、 動物役や昆虫まで、何でもやらなきゃいかんもんねっ。) ●のぞみくん&ひさえさん Take1 おおお、いいカンジ! ひさえさん「年上のカノジョの寂しさも入れてくれました。」って、出てる出てるっ。 のぞみくん、ほんとに初心者か? 年の差がイキてるわ~。どろどろ昼ドラ風ワケありカップルみたいじゃん、わははは。 ・・・と、私は大ウケしてましたが、 みんなは、この通り、真剣にモニターチェック中。 〇のぞみくん 自分の演技を見たのぞみくんは、「まばたきが多すぎる」と、もう、自己NGを出しました。 そうです、あんまり多いと、おどおどしたように見えちゃうので、今回の場合はなるべくコントロールして、 そこそこで。 そして、私からのアドバイスは「姿勢」と「動作」です。 えらそうな態度を、カラダで表現する時は、「前のめり」より「ふんぞり返る」方が効果的。 では、もっとえらそうなかんじで、年下のエゴ男を、やってみよう。 〇ひさえさん ガキんちょ相手に、包容力まんまんの年上カノジョ、すばらしい~。 演技に関しては、何も言うことはございませんが、一個だけ。 最後のセリフ、立ち上がってから言うと、フレームから外れちゃうので、座ったままで。 (編集つなぐとわかりますが、せっかくのセリフ、バックショットにするしかなくなっちゃうから) ◎ポイント カメラの画角、サイズ、16:9のフレームを意識する。 初心者のみなさん、これ、映像演技ならではの大事なことです。 2人とも、以上の点を修正してくれました。 それでは、このワケありカップルの完成版を続けてごらんください。 ●のぞみくん&ひさえさん 完成版 のぞみくん、エゴ感出まくり! この、自己中な態度と表情と目つき、そしてセリフの言い方! ムカつくっ。 動作は、ふんぞり返る→前のめり→ふんぞり返る を、途中で入れました。 切り返しのひさえさんカットに、偶然のぞみくんの肩が入りましたが、同じタイミングなので、 まるで2カメで撮ったように、ちゃんとつながっています。 のぞみくん、Take2で、ここまで修正してくれました。 観てるヒトに「ムカつくっ」と思わせたらこっちのもんです。 ◎ポイント 動きをつける時は、セリフでキッカケを決め、 何度やっても同じタイミングで。 「編集した時つながるように演技する」というのは、こういうこと。 ひさえさん、演技も立ち上がるタイミングもばっちり。 かわいくてしょうがない年下のカレシに捨てられる寂しさも、最後は「甘やかしたらいい気になって」というオトナ感が、出てて、いいカンジ。 演技がやりたくてやりたくて参加してくれたのぞみくん。 たった一回で、ここまで修正できるなんて、カンがいい。最初から役者細胞DNAが組み込まれてるわ。 ひさえさん、演技指導は、やっぱ役者さんからコーチしてもらうのが一番です。 さて、次は、両方とも初参加の、まさしくんと、ゆうみちゃんです。 実はこのお2人、最初はちょっと様子見でということで、見学の予定だったのですが、ふと見ると・・・ セリフ合わせしてるやんっ。 じゃ、撮ってみようということになり、2回目のTake2をアップしました。 ●まさしくん&ゆうみちゃん Take2 ●まさしくん いい線いってる! でも、エゴ感よりも、実はまじめで誠意のあるカレシが、カノジョに自分の意志を伝えているというカンジ。 まさしくんは、じんくんや、のぞみくんの映像を見て「僕は表情が乏しい」と、自己NGを出していました。 (そもそも見学だったのに、勇気を出してトライしただけで、じゅうぶんですが) 今回のテーマは、エゴイズム。 観ているヒトに「なんじゃこの男っ」とムカつかせなければなりません。 プロのじんくんや、カンのいいのぞみくんと、比べる必要はありません。 表情を作るには、当然技術が必要なので、それはおいおい勉強するとして、 今のまさしくんなりのエゴ男だって作れます。 無表情なままで、エゴイストやってみたら? ただし、セリフの言い方をもう少し強気で。 (この時いいそびれましたが、のぞみくんの「姿勢」と同様、顔も角度を変えるだけで えらそーに見せることができます。もっと、アゴあげると、上から目線でしゃべっているように見えるよ) そして最大の小道具「めがね」を、もっと有効に使ってみようということになりました。 ●ゆうみちゃん ゆうみちゃんは「怒るというより、悲しいキモチ」を表現してくれました。とってもよくわかる。 ついでに、演技が好きなのもよーわかる。 初参加で、目の前にカメラあるのに、ものおじせず堂々としてるのに感心しました。 20代前半の、年相応の女の子らしく、 また、まさしくんの演技をうけると、そういうリアクションになってきます。 その悲しいキモチの路線はOK、ただし・・・。 おめめくりくりぱっちりのゆうみちゃん、まばたきは、めちゃめちゃ効果が出ます。 ちょっと、効果ですぎちゃってる。 初心者のみなさんへの、最大のアドバイスは、お決まりのコレ。 ◎ポイント 表情を出したいときは、動きを大きつけるのではなく、 キモチを上乗せする。 人間のリアルな感情というのは、 怒りがこみ上げてくると「ここで怒ってはいかん」と抑えようとします。 悲しいときは「ここで泣いてはいかん」と、涙を抑えようとします。 動揺しているときは、平静をよそおいます。 私は怒ってるのよ、私は悲しんでいるのよ、動揺してるのよ、 という表情を作ろうとしては逆効果。 そういう場面では、キモチをぐーっとあげると、 抑えても抑えても、表情は勝手についてきます。 そしてキモチをあげるには、ありったけの想像力で自分を催眠術にかけてみて。 今回の「セッション」の場合は、カノジョ役ならこんなカンジ。 「まさしくん、最初はあんまり乗り気じゃなかったけど、付き合ってみたらけっこういいやつで、 自分の夢である役者の勉強を一生懸命なところに尊敬してた。私は本気だったのに。心から応援してたのに。 久しぶりに会えたのに、なんで突然別れるなんて言うの?」 さて、完成版では、どう変わったでしょうか。 ●まさし&ゆうみ 完成版 いいじゃん~。 2人とも、さっきより自然で、なおかつ、気持ちが伝わってくる。 まさしくん、メガネは、究極の小道具です。映画やドラマでメガネをかけた俳優さんが出てきたら、 どうやって使っているか、しっかり見てください。 一見、自然にあげたり、はずしたりしてますが、もちろんすべて演技です。 ゆうみちゃん、ぐっとこらえてることで、さらに悲しいキモチが出るのわかりますか? くりくりおめめは、ゆうみちゃんの武器です、ぱっちり開いてじーっと見つめたり、 要所要所でまばたきをするを、コントロールできるようになると、それが演技になります。 観ている人は、こう思えてきます。 「なんじゃこの男、冷淡な態度! こんなかわいいカノジョふって、ナニさまのつもり?!」 おまたせしました、ラストの大トリは、じんくん&みさきちゃんの完成版です。 その前に! いつもは3テイク撮り、3テイクめは、私の演出要望を反映してもらいます。 今回は時間がなくなり、撮り損ねたので、ここに書いておきます。ごめんねっ。 さて、そもそも、セッションのこの主人公のエゴ男、 自分から口説いたカノジョに、別れを持ち出したのはなぜでしょう?? 映画を観たヒトは思い出して下さい。 主人公は、カノジョと会う直前、 ドラムの猛練習のさなか、またもやスパルタ教師に認めてもらえず、 とうとう自分のパートを、ライバルに奪われました。 それまではうまくいっていて、ちょっと図にのっていたところだったので、 突き落とされたように、彼の自尊心は、ボロボロです。 くやしくて、くやしくて、このままあきらめるワケにはいかないと、焦りがつのり、 執着心と執念で、半ば、狂気じみた心理状態です。 このシチュエーションをふまえた上で、男子には、 「ライバルに主役を奪われ、めちゃ焦ってきて、苛立っている心理を加えて」 と、要望をだそうと思っていました。 ところが、 日ごろから、「脚本の意図・監督のねらいを汲み取る」という、訓練をしているじんくんは、 最初の、Take1の時点で、すでにきっちり押さえてくれていました。 「なぜ、カノジョに対して、こんなにエゴなこと言うのか」という、主人公の心理を、掘り下げて、 演技に生かしています。 一方で、そんなことがあったとは、知らず、ただ久しぶりに会えるのを楽しみにしていたカノジョ。 突然、別れ話を持ち掛けられた、カノジョの心理状態はどうでしょう?? 女子には、こういう要望を出そうと思っていました。 「彼は、本気で別れたいと言っているのかどうか、確かめたいというきもちを加えて下さい」 カノジョがだんだん、怒れて、悲しくなるのは、「ふられるから」や「別れるから」よりも先に、 何があったのか知らんけど、自分の好きな男が、我を見失い、おかしくなっちゃっているからです。 みさきちゃんも、take1の時点で、じんくんの演技を受け、 怒る、悲しむ、だけではない心理を、ビミョーに取り入れていました。 あーなるこーなると勝手に決めつけて、屁理屈を並べる彼の話を、大きく動揺せず、じーっと聞いて、 「夢を持っているヒトは、そんなに特別で、そんなにエライコトなのか」という意味のことを、 なるべく冷静に、何度も問い正していますね。 カノジョの根底にあるのは、そんなコト思う男じゃないはず、と、彼を信じたいからです。 ふたりの間にビミョーな空気を作るのは、カノジョ側のリアクションにかかってきます。 (そりゃ、カメラは、ドリーで寄りたくなります) じんくんが投げた演技を、みさきちゃんはきっちり受け止め、緊迫した空気を作りだしました。 ちなみに、カノジョのセリフ、 日本語字幕では「ナニ様のつもり?!」と、端的で素晴らしい翻訳ですが、 直訳すると、 「何があったの?!」とか、「どうかしちゃったの?!」(What the fuck is wrong with you?!)」です。 ふたりの心理を意識して、観てください。空気までも映っています。 ●じんくん&みさきちゃん 完成版 ふたりとも、Take1で、このシーンの一番肝心なことをクリアしていたため、もうええわ。 あと細かいところは、好きなように自分たちで修正しやー、と放置しておきました。(ラクだわー。) 映画観た人は、ご存じだと思いますが、 主人公は、数年後われに返り、自分はどうかしていたとカノジョに謝っています。 じんくんは、その結末を考慮に入れて、演技してるのわかりますか? 執念と焦りで、あとには引けず、自分のことをわかってくれているヒトにほど、ひどいことを言う男。 観てる方は、えらそーな態度というよりも、 「おいおい、自分の思いどうりにいかんからって、カノジョに八つ当たりしてどーするっ」と、 エゴそのものに、超ムカつきます。 「脚本の意図を汲み取って演技する」ということは、映画やドラマ、もちろん舞台でも、一番大事なことです。 初心者のみなさんは、もちろん最初からできなくてもいいんです。 だれでも最初は、セリフ覚えて動くだけで、いっぱいいっぱいだから。 でももし、もっと上達したいとか、本物の撮影に参加したいとか、プロを目指したい、のであれば、 脚本を読み込んで意図を理解するという、地味で、根気がいる作業を、自ら訓練しなければなりません。 ここからは、上級レベルの話ですが、具体的には、どうやって訓練するかというと、 ・世にでまわっている脚本やシナリオを読み、 「自分ならこう演技する」と思いながら、実際の完成品を観て、俳優さんがどういう演技をしていたかを見る。 ・ひたすら映画を観る。ただ鑑賞して、おもしろかった、つまらなかったというのではなく、俳優さんの演技をいちいち分析し、研究しながら観る。などなど カメリハでは、すでにできあがっている映画をテーマにし、脚本の意図や、監督のねらいを、俳優さんが演じ、映像として完成されているから、まだラクですが、 ホンモノの撮影では、台本と、画コンテしかありません。ただの紙です。 (下手すると、数日前に渡されます) 自分に与えられた役が、どういう気持ちなのかを、このシーンでは何を伝えたいのか、 自分なりに考え、監督のねらいを読み取って、演技設計をしなくてはいけません。 ずっと書いてきているとおり、演技そのものに正解はありませんが、 脚本の意図と監督のねらいに、応えている演技が、正解です。 それでは、最後に、「セッション」の予告編をもう一度確認しましょう。 突然わけわからんことを言い出す、彼の本心を読み取ろうとして、じーっと見つめてます。 まばたき一回もしてないっ。 自分たちの演技をじーっと観ているみんな。 何かを読み取ろうとする時、こういう表情になるのねー。 あまりにも真剣なので、初参加の3人より、私の方がキンチョーするわ。汗。 見学と言いながら、熱演してくれたゆうみちゃん、
実はシャイと言いつつ、思いきってトライしてくれたまさしくん、 役者細胞もちで、カンのよいのぞみくん、初参加ありがとうございました。 また、ぜひ来てね! そして、ベテランならではの演技指導のひさえさん、 演技だけではなく、俳優としての姿勢をお手本としてみせてくれた、じんくん&みさきちゃん、 ご指導ありがとうございました。 さて、次回は、9/20(木) テーマは「私は、ダニエル・ブレイク」です。 セリフはがっつり覚えず「リアル」さ優先で、やってみましょう。←私もコレ初です。 おつかれさまでした!
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Vol.24「英雄の証明」
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