第10回めは、英国王を社長に変えて「怒り」の演技。怒るって奥が深い。 カメリハ・オリジナル「英国王のスピーチ」スタート! 社長役:アンクラウンくん、ちあきさん、ひさえさん。言語療法士:高原靖典先生 まずは、それぞれのTake1を、編集なしで。 ・アンくん 演技初心者のヒトは、アンくんの演技がとても参考になると思います。 高原先生には「目線が定まらないこと」を、私からは「動きが整理されていない」ことを、 指摘。 一度、頭の中で動きを整理したら、だんどりくさくならないようになるまで、何度も繰り返して練習し、カラダに覚えさせ、自然に動くようになるまでやるしかないです。 おおっ、と思ったところは 社長であることを自覚させられたとたん「背筋がすっと伸び、相手に対してナナメに立ち」エライヒトの立ち方に変わりました。 立ち方などのポーズは、時にはセリフ以上に、気持ちが表現できます。 「形から入って、心に至る」。 とりあえずカタチから入っても、いずれ心がついてくる! ・・・と、TVで茶道の先生が言っていた。 確かに、表裏一体。 あれやこれや、つっこまれながら、編集した完成版はこちら! おお、滑舌、ちょびっとだけ良くなってる。(まだまだだけど。) 表情のリアクションも、相手のセリフを、まるで初めて聞いたかのように、反応し、 セリフ待ちの表情が少なくなってる。 リアルさを、身体を使った「カタチ」で作る例として、 リアル怒りを表現する時は、 声を張り上げるより、手を大きくふりまわすより、 「肩」を使って荒く呼吸する方が、怒っている感が増します。小声でも。 リアル笑えるを表現する時は、 わっはっはーと大声で笑い、手をばんばんたたくより、 「腹筋」を、動かしふるわす方が、おかしくてしょうがない感が増します。声なしでも。 ここで、高原先生に注目。 最近、ハリウッド映画観すぎ!の高原靖典先生、 Take1では、挑発の仕方が、熱くてハデ。 「・・・せんせー、なんかアクションが、ジェフリー・ラッシュより、ガイジンになってるんですけど・・・」 「ほんとだ。もうちょっと冷静にやろ」と、 しれっとした、余裕の挑発に変えてくれました。 Take1と完成版を見比べてください。 シーンの意図を再確認し、コロっと変わってます。 つづいては、 ・ひさえさんとちあきさんの完成版。 こわいつ。迫力っ。 お二人とも、「怒り」はこの完成版で、問題ないのです。 きっと、OK~、という監督さんもいらっしゃると思います・・・が。 ・・・いや、ちょっと待てよ。 ・・・何かが、違う。 ・・・リアルさが、足りないような。(欲が出てくる) なのに、私が、お二人に「リアル」をうまく説明できず、 あれやこれやマトを得ない要望を出し、 混乱させたまま、時間切れとなりました。ごめんなさい、猛反省。 カントク、言ってる意味がわかりません、とつっこまれる典型的な悪い演出。 お二人にどう説明したらよかったのか、 その晩ずーーーっと考え、はっ!と気が付きました。 おせーよ。 お二人にお願いしたかった「リアル」とは、 声の大きさ、しぐさなど、怒り方、そのものではなく、 「プレッシャーに押しつぶされている」を足してほしい、でした。 お二人とも、か、かっこいい。 例えば、以下のような設定をイメージしてください、と言えばよかったです。 (例) ひさえさんと、ちあきさんは、 何度もリメイクされている、超名作・日本映画の、オーディションに受かり、 四代目・主演女優に、抜擢されました。 一代目は、杉浦春子さん。 二代目は、原節子さん。 三代目は、吉永小百合さん! 受かっちゃったことはいいが、 みんなの期待、超名作、四代目、監督はレベルの高いこと要求する、などで、 連日プレッシャー、ほぼノイローゼ。 まわりは、大丈夫、何とかなるよ、と無責任なことな言うけれど、 お稽古してもお稽古しても、自分の思ったように演技ができず、監督もうなずいてくれず、 ああ~、もうムリ、逃げちゃいたい!と、自信喪失。 撮影はもうすぐなのに! 撮影スタジオのセットでお稽古中、ちょい役で出演する高原先生が、 稽古つきあうよ、と、来てくれました。 先生が、一生懸命つきあってくれてるにもかかわらず、 女優「私は、三代目と違って、しょせん名古屋の役者とか、ミスキャストだとか言われ、 観客を、がっかりさせてしまう・・・」 振り返ると、高原先生が、長年撮影で使われてきた、主演女優の椅子に座っています。 女優 「・・何してるんですか。立ってください。それは主演の椅子です」 高原 「ただの、セットの椅子でしょ。」 女優 「ただの椅子じゃありません。そこには、歴代の大女優さんたちが・・・」 高原 「小道具さんも座ってたよ。ただの椅子だよ」 女優 「ちがいます! 話を聞いてください!」 高原 「何で?」 女優 「何でって・・・私が、主演だからです」 高原 「あなた、主演なんてやっぱりムリ!って言ってたじゃない。降りたいんでしょ? なんで話聞く必要あるの?!」 女優 「主演女優として、言わなきゃいけないからです!」 高原 「・・・そのとおり。あなたは誰よりも勇敢で、立派な主演にならなきゃ。」 この設定、英国王のスピーチに、より近くないですか? では、気持ちはこの「プレッシャー」のまま、 セリフを置き換えるのは、どうでしょう? 怒りの表現は、ビミョウに変わってくると思います。 怒りながら、泣けてくるひともいるかもしれません。 腹が立つのは、高原先生ではなく、プレッシャーで負けそうになっている自分かも。 トム・フーバー監督も、このシーンを見せ場にしたかったのが、よくわかります。 ついでに、 一般的には、強い感情を表す時は「引き算」の演技をすると、リアル感が増すと思います。 (コリン・ファース演じる王様は「吃音でかんしゃく持ち」というキャラであったため、 ぶちキレてましたが) 怒る演技は、怒ろう怒ろうとしがちですが、 人間のリアル感情は、めちゃ怒っていればいるほど、 怒っちゃいかいん、怒っちゃいかん、 という作用が働くそうです。 「引き算」の演技で、よく例にあげられるのは、 「酔っぱらう」演技です。 では、もう一度、ホンモノの映像を見て観ましょう。 シーンの前が見られる、英語版をのせます。 セリフわからなくても、プレッシャー感がよくわかります。 みなさんおつかれさまでした。 私が一、一番勉強になりましたっ。不肖ディレクターですみません。 もうひとつ、猛反省。 手持ちのカメラワーク、水平キープできずごめんなさい! さて次回は、 サスペンスホラーの名作「ローズマリーの赤ちゃん」です。 みんなで結託してウソをつく役に、挑戦してください。
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Vol.24「英雄の証明」
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