男子はおかま、女子はガラの悪いカウボーイ、超難易度の高い「性別越え」に挑戦。 人数最多の7人で、カメリハ・オリジナル「ダラス・バイヤーズクラブ」スタート! レイヨン:(上段左から)じん、まこと、たくろう、ゆうと ロン:(下段左から)みさき、ゆき、ようこ まずは一言。 見学に来てくださったSISTERMANAGEMENTのマネージャー様、貴重なお言葉ありがとうございました。 ゆきちゃん、そして新規の男子3人まことさん、たくろうくん、ゆうとくん、こんな難しい役の回に、 よく来てくれました。その度胸に、びっくりしたわっっ。 そして謝罪。遅刻申し訳ございませんでした!!! さて、今回は、あまりにも難易度が高いため、 シーンの意味や、人物設定の確認など、 演出の要望を先に伝えてから、2回撮影しました。 今回は「完成版」から!(演じてくれたのと逆順で) ●ゆき&ゆうと完成版 〇ゆうとくん 「サングラスを外すきっかけで、話を本題にうつして」と要望しましたが、そのタイミングで、キモチもきちんと切り替わっているのが、伝わりました。 でも、「やっぱり、あなたに払いたくないわ」の前に、はーっとため息をついて、残念そうにしていますが、ちょっとだんどりっぽく見えちゃう。 「ここでため息つこう」という、頭の中の演技プランだけが先行しないように注意。 そのあとは持ち直しました。 レイヨンにまっすぐに向き合い「ばか女」と言って、まだ何か言い足りなさそうにじっと見つめたのは、 心と裏腹な、切なさが出ていて、いいカンジです。 (「じっと見つめる」は、時に、セリフよりキモチが伝わる) さて「サングラス」や「めがね」は、定番の小道具ですが、かけたり外したりは、 「なぜそうしたか」という意味をもって使わなければいけません。 テレビや映画で俳優さんたちが、あたかも何気に、かけたり外したりしていますが、みなさん、 めーーーっちゃくちゃ計算した上で、そこに意味を持たせて、使いこなしていらっしゃいます。 なので、何度撮っても、かけたり外したりは、すべて同じタイミング。 めがね類、ぼうし、たばこなどの小道具は、「なんのために使うのか」を、演技設計に組み込み、 うまく使えば効果絶大。ただ、なんとなく、使わないようにしましょう。 「お金を差し出す手」に注目。 現場で説明したことは、この編集された映像を見て、わかったと思いますが、 カメラ1台で、何度も撮影する場合、同じタイミングで、同じ演技(お金の持ち方)をしないと、編集でつながりません。 これが、映像演技に求められる、特有の技術。 でも、こういった技術的なことは、練習すれば身につくから大丈夫。 今は、まだそんなに気にしなくてもよし! そんなことより、問題は・・・ 動作が、がさつすぎて、おかまに見えんわっ。笑。 助手席に飛び乗ってくるその動きは、どうみても、オトコやんっ。 技術的なことはあとまわしでよしですが、 まず大前提の「おかま」の所作を研究しましょう。 定番の方法、何かを持つ時は、小指に集中してみて。 ●ゆき&たくろう完成版 〇たくろうくん シャツを肩からかけて、衣装に気をつかったのはえらい。 見た目から、女性に入っていくのも重要なコトです。 例えばオーデションでも、その役柄にあった衣装を着ていくと、自分自身も役に入りやすいし、審査する側もイメージ沸きやすく、何より、やる気が伝わります。 「やっぱりあなたには払いたくないわ」の前も、一瞬、表情が変わり、心が動いたのがわかります。 (ほんもののレイヨンは、一瞬、目を細めてます。) あとは、動作を整理して、前後にふれがちなムダな動きを抑えましょう。 コメディも、シリアスも、いろんなドラマや映画に登場するおかまの共通点は、 迷いのない「堂々とした態度」だと思います。 「おかま役はちょっとこっぱずかしい」と思いながら演じている、素の自分と、真逆です。 特に女装しているおかまのみなさんは「これが私よ」という気高い心の強さがあります。 それを演技として、カラダで表現する時は、 武道の選手ように、おへそに重心を置き、背筋をのばし、胸をはってみて。 〇ゆきちゃん 先回から、わずか2か月で、急速に良くなっているのでびっくりしたがねっ。 もう、初心者扱いやめた。 2人のおかまクンを相手に、よくがんばりました! まず、良い点は、キモチが入っています。 2人のおかまクンを、めちゃ毛嫌いしているのが、よく伝わってきます。笑。 死と向かい合って、必死になっているのもわかります。 ただ、深刻な絶望感より、死んでたまるかという力強さを足した方がいいです。 下を向く演技を減らしてください。 さて、キモチはOKですが、「身体表現」がついてきていません。 「ガラの悪い女」を、カラダを使って表現するには、 みさきさんのように「お行儀の悪く足を組む」、 ようこさんのように「足をばーんと投げ出す」など、ひとめでわかる、身体表現を考えましょう。 例えば、「あぐらをかいて座る」はどう? レイヨンから札束を見せられたとたん、急にきちんと座りなおせば、動揺しているのがわかります。 身体表現の練習。 「自分の部屋の中を一周歩いて、イスに座る」というだけの動きを、 ・これから授業をはじめる大学の先生 ・授業に遅刻してきて席に着く学生 ・かつあげする相手を物色しているワルイ女 と、それぞれ、身体だけの演技で、演じ分けてみてください。セリフなしで。 歩数、背筋、手足の動き、目つきなど、全部変わってくるはず。 あと、銃をダッシュボードの上に置いてはいかんよ。笑。 ダラスだろうが、日本だろうが、おまわりさんが飛んできます。 小道具は、よーーーく意味を考えて使わないと、自分の演技に影響するだけでなく、 シーンまでうそっぽくなるので、取り扱い要注意。 ついでに、本当の撮影現場では、小道具さんたちが丹精込めて作っているので、 そういう意味でも、取り扱いは大切に。 ●ようこ&まこと完成版 このペアは、編集してみたら、独特のキンチョー感が出ました。 おもしろいっ。 〇まことさん 私は、舞台出身の役者さんは、かなり信頼しているため(むしろ、舞台出身の役者さんしか信用していないといっていいぐらい)、特に要望はありませんが、 あえて言うなら、映像特有の要望。 カメラの前では、前髪あげてほしい! 本当のロケでも、照明さんなし撮影は、いっくらでもありますが、 前髪でカゲができては、せっかくの目の演技がいかせません。 笑顔を浮かべながら、ときおり真顔になって、相手をちら見する目、 編集ではその「視線」を生かしたので、よけいもったいないです。 でも、舞台ふんでるヒトは、映像特有のコツや、カメラ慣れはすぐできます。 「さっさと取引してくれれば、消えてあげる」というセリフと演技に、インパクトがあり(ねらった?) 見入ってしまいました。 このシーンの、はっきりとした見せ場になっています。 〇ようこさん 初対面の相手と、初組み合わせで、演技を成立させられる、この安定感。 相手がだれであろうと、柔軟に対応できるのも、役者さんの力量。 さて、ここからは、上級者向けです。 足をダッシュボードに、ばーんとのせる、 相手の顔も見ず「欲しけりゃ、お金出して」と、指をスナップさせるなど、 日本人の女性は、なかなかできないと思いますが、男女とも、ぜひ見習ってほしいです。 男女ともに「ガラが悪い」を、ちょっとしたポーズを意識し、カッコよく演じられるヒトは、 とても「映像映え」します。 ようこさんのように、スタイルもよく、手足も長いひとは、それが役者としての「商売道具」です。 フル活用してください。 そして余談ですが、小津安二郎監督の名言、 「人間少しぐらい品行は悪くてもいいが、品性は良くなければならない。品行は直せても、品性は直せないから」 「お行儀ワルくてもいいけど、生まれもった性根が腐っているやつはあかん」という意味です。 今回のロンやレイヨンのように、ガラは悪いが、性根の腐っていない人間のミリョクは、古今東西万国共通。 そういうキャラが物語の主人公であることは必然です。 伝えたいことの本質を理解し、そのギャップをどう演じるか考えることで、演技の幅が広がります。 また、ようこさんは、演技がキビキビっとしているので、動きに合わせたテンポで編集すると、 キンチョー感が出てきます。 気のやさしそうなおかまのまことさんと、いかにも、大酒飲んでロデオのりこなしてます風ようこさん、 お互いのキャラで、お互いの演技を立てあってます。 カウボーイハットは、銃を隠すために使用。 今回、小道具をできるだけそろえ、テーブルでダッシュボードを作ったのは、 せんぱい3人が、どんな風に使うのか、初心者のみなさんにお見せたかったからです。 事前に頼んでもいないのに、使いこなしてくれました。 そして、個人的には、 ようこロン&まことレイヨン、「この二人どうなるの?」と、続きがめちゃめちゃ観たい! ●みさき&じん完成版 いつも息ぴったりですが、過去最高の完成度。 〇みさきさん 「素」のみさきさん見たらわかると思いますが、このヒトの「ガラの悪い女性役」には、「素」の本人は いません。だれかが、乗り移っちゃってます。 自分自身の個性を最大限に生かし「ガラの悪い女性」を作るようこさんと、 素の自分はどこかへひっこめ「ガラの悪い別人女性」にのりかわるみさきさん、 演技に正解はありませんが、2人とも正解です。 レイヨンが現れた時、銃をどこに置いたか忘れて探すという、慌てぶり。笑。 お金を見せられた時の「動揺してませんよ」という態度丸出しの、動揺ぶり。 ちょっとハデめなメイク、だらしない足の組み方、目つき、ふてぶてしさ。 ロンの人物像を、みさきさんの中で変換し、別人に出力するといった、高度な技術で、 計算しつくされた演技です。 別人をあやつっているのは、みさきさん本人です。 「ようこさんは、スタイルが良く足も長いから、ダッシュボードに足ばーんは、画になるからいいわさ」 と、思ったヒト、 みさきさんは小柄ですが、こういう計算された演技で、存在感は、大です。 〇じんさん 技術的なことから解説。 お金を持つ、手の動きに注目。 まるで、2カメで、同時に撮影したかのようにつながってます。 「20人分」の前でくりっと、手首ひねるのも、 まさに「この、くりっを生かして、その前でカットつなげ」というカット点まで 作っている。(ので、そうしました) 今さらですが、このじんさんがしゃべっている相手は、数分前に、先に撮ったみさきさんです。 編集って、キモチワルイでしょう。 「やっぱりあなたには払いたくないわ」の前で、一瞬、視線をすっとはずし、心の動きを表しています。 (ほんもののレイヨンと同じぐらいのさりげなさが、高度。) そして、技術的なことより、なによりも肝心なこと! 男子、各自がんばりましたが、 今回、おかまに見えるのは、じんさんだけです。 そして、じんさんは、これが初・おかま演技です。 レイヨンの人物像をきっちりおさえ、 立ち姿、歩き方、指の使い方、肩のひねり方、アゴの角度、ふざけ方、すねる目つき、口の閉じ方、 すべて、演出の要望の、基準を上回るエレガントさでした。 もう、どこのお店に出しても恥ずかしくないわっ。 それぞれのペアごとのTake1を、ノー編集でアップしておきます。 みなさんたった2回の撮影で、いきなり上達してる自分自身を、自画自賛してください。 (ハデに札束ばらまき「カットって言って」という表情のじんさんのNGは必見) さて、帰り際に、 「自然な演技をするにはどうしたらいいですか?」と質問されて、答えましたが、補足。 もし、じんさん、みさきさん、ようこさんの演技が、自分より「自然な演技」に思えたならば・・・。 「自然な演技」という言葉は、 ひょっとして、演技のことをよく知らない、シロウトさんの視聴者が使う用語かもしれん。 本来は、こう言います。 「あの役者さん、役づくりを研究して計算しつくした、見事な演技ね。」 では、映画「ダラス・バイヤーズクラブ」の映像をもう一度。 男子のみなさん、いろいろ書きましたが、 こんな超難関おかま役が、初心者のうちからできるヒトなんて、まず、いません! めげんなよっ。 翌日、 見学に来てくださったSISTERMANAGEMENNTのマネージャ―さまから、 ご丁寧なメールいただきました。また、次回お話します。 ありがとうございました。 次回は、9/18(水) 初・韓国映画、ポン・ジュノ監督の「母なる証明」です。 長回し、アップ、カメラ目線、の演技に挑戦してください。 会場は「昭和文化小劇場・大練習室」ですので、おまちがえなく! ※写真撮るの忘れたので、映像から切り出しました。おかまには見えんけど、かわええ。ははは。
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Vol.24「英雄の証明」
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