第12回めは、かつてないシリアスなシーン。セリフなしで、衝撃と動揺を表現する、難易度の高ーい演技を、熱演。 カメリハ・オリジナル「ライオン~25年目のただいま~」スタート! 今回は、芸大でオペラを学ぶ、現役女子大生・あゆうちゃんが参加してくれました! 左から:あゆうちゃん、アンクラウン、みさきちゃん (みさきちゃんはさておき、アンクラウンが、頼もしく見えるっ。) 映画「ライオン」のこのシーンは、主人公サル―くんがあるお菓子をきっかけに、自分の出生・家族の「記憶の断片」がよみがえるシーンです。 貧しい村で生まれ育ったサル―は、幼い頃、迷子になり、実の家族と離れ離れになります。つらい体験をしたあと、幸いにも裕福なオーストラリアの夫婦の養子となり、立派なよい青年に育ちます。しかし、ある日友人たちとのパーティの席で、おかしをきっかけに、記憶がフラッシュバック。「実の母は?兄は?」「自分は何者か?」 ・・・という、設定で、キモチを作り、おかしで衝撃受けて、動揺してね。 3人「そんな経験したことないから、むずかし~!!」 ま、やってみよう。 それでは、ノーカットのマスターショットを、3人連続で。 〇みさきちゃん・Take1 〇アンクラウン・Take1 〇あゆうちゃん・Take1 みんないいかんじ。 ・・・ですが、ちょっとまてまて。 「役の設定」について、もう一度、考察してみましょう。 考察①:主人公をが「!」と衝撃を受けたのは、どの時点か。 Take1では、みさきちゃん、アンくんは、ともに、一口食べて「!」になっているように見えます。 しかし、 主人公は、超ビンボーだったため、このおかしを食べたことがないのです。 食べたくても、買ってもらえない、憧れのおかしだったと思われます。 カタチと、イイにおいが、記憶の断片として残っていたのでしょう。 なので、「!」となるのは、食べた瞬間ではなく、見た瞬間。 においをかいでいる時の、サブテキスト(心のセリフ)は「このにおいは、子どもの頃にかいだような・・・」かな。 その証拠に、 本編映像では、幼い主人公が兄に「おにーちゃん、あれ買って」という、フラッシュバックが入っていますが、そのタイミングは、おかしを発見した時です。 あゆうちゃんは、見た瞬間に「!」となり、おそるおそる一口食べてみるという演技になっています。本人は、ねらったわけではなかったそうですが、えらい。 考察②:友人が声をかけてくれた瞬間のリアクションについて。 前半、3人とも、友人が「ねえねえ、○○ちゃん」と声をかけた時点では、ボウゼン。 「だいじょうぶ?」で、はっと我に返っています。 さて、これは、そのカントクの演出意図にもよるビミョーなところで、OK!という監督もいらっしゃるかもしれません。 が、私の意見は、 いくら衝撃を受け、動揺していてもて、横で友人が声をかけているのに、ボウゼンとしたままリアクションなしは、ちょっと不自然なかんじがするのです。 後半、「実は、名古屋(映画ではコルカタ)出身じゃないんだ」も、ボウゼンとしたまま自分の世界に入っちゃっているように見えます。 しかし、ここは、さっきパーティーの席で「自分はコルカタ出身です」と友人に自己紹介したばかりで、うそついちゃったことを訂正し、本当のことを告げる(=なぜ動揺しているかこれから説明する)ため、心配してくれる友人に向かってセリフを言う方が自然だと思います。 その証拠に、 本編映像で、主人公演じるデーブ・パテルくんは、「ぼくはコルカタ出身じゃないんだ」と切り出す前に、ちょっと「鼻」を触っています。 この「鼻を触る」人間の心理は、「隠しててごめんね、実は・・・」など、言い出しにくいことを切り出す時の、典型的なしぐさです。 「心理を表す」ちょっとしたしぐさ、研究するとおもしろいよ。 さて、あとからかけつけてくれた高原先生、みんなのこの演技をモニターで観ながら、 「やりがちな演技!」と解説してくれました。 ボウゼンとしたまま、自分の世界に入り、セリフを言う、は、ベテランの俳優さんも、よくあるあるなのです。 お若いみんなは、直せる力を持っているので、大丈夫なのですが、 いい年こいて、このクセがついちゃったまま、自分に浸っているような俳優さん、実際に、結構います。 演出側から見ると、ちょっとイジワルな言い方すると、相手役も、脚本も、演出意図も、 置き去りにし、セリフ言うのが気持ち良くなっているように見えちゃうんです。 3人「むずかし~!!」 と言いながら、さらにもえる。3人。 撮っては、観てをくりかえしました。 みさきちゃんは、主人公のキモチを読み取り、考察する作業に真っ向から取り組んでいます。たかが1シーン、されど1シーン。その地道な演技設計の作業は、いつか2時間の映画に必ず生かされる。 アンくん、こんなシリアスなシーンよく挑んだ。本人のキャラが生きています。もう友人役は、お手のモノってかんじです。おいしい脇役もってこい。 あゆうちゃん、初演技と言いながら、舞台立っているヒトは、基本的な心得が備わっています。カンがいいし、やっぱり度胸があります。自分では「表情が硬い」と言ってましたが、 それはどんどん慣れてくるから、大丈夫。 さて、あれこれ、言いましたが、最後にひとこと。 いつもは、立ち位置だの、動きの範囲だの、フレーム内の演技を意識してもらっていますが、 もう今回は、考えなくてもよし! それでは、カット割りしていろんな方向から撮り、 それぞれの演技や流れに合わせ「友人のアップ」を違う場所に入れて編集をした、 完成版を、3人連続で。 〇みさきちゃん・完成版 〇アンクラウン・完成版 〇あゆうちゃん・完成版 おおおー!! 3人とも、Take1と比べ、がらっと変わったのわかりますか? 主人公も友人も、お互いのようすにきっちりリアクションし、 何に衝撃を受け、動揺しているのか、はっきりわかります。 肝心なのは、このように、演出意図説明すれば、演技が変えられること。 ここで、もう一度「ライオン~25年目のただいま~」本編映像。 3人とも、シリアスな濃いいシーン、おつかれさまでした。 高原先生、お仕事終わったとたんかけつけてくれてありがとうございました。 みさきちゃんは、打てば響く、ことに毎回感心します。 あゆうちゃん、初参加で、いきなり難易度の高いのに当たったので、もうこわいもんなし。 アンくん、デーブ・パテルくんと「顔の濃さが同じですからねっ♪」と喜んでいた。こわいもんなしだわっ。 反省とお詫び:今回カゼのため、いつも以上にボケてた。それぞれの子役の声をオンリーで録り忘れてごめんなさい。かわいい声は、私です。加工しました。 さて、次回は、3/9(金) クエンティン・タランティーノ監督の「ジャッキー・ブラウン」です。 演技のテーマは、「小心者」と「大胆不敵」。 年齢性別問いません。 自分はどっちのタイプ? やってみたいのはどっち?
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Vol.24「英雄の証明」
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