2年半ぶりに再開のカメリハ! B級ホラー映画の監督と音効さんののんきな会話、これが悲劇のラストの伏線になります。 カメリハ・オリジナル「ミッドナイトクロス」スタート! (左から)ちあきさん、じんさん、ようこさん。 役は交代で演じてもらいました。 映画「ミッドナイトクロス」の冒頭、制作中のB級ホラー映画を試写中。 女優さんの「ヘタクソな悲鳴」について相談するシーンです。 ~演じてもらうキャラ~ ・音効さん:職人気質。正義感のある、気さくなタイプ。 ・監督:とほほなB級映画をまじめに撮り続けている、にくめないタイプ。 ~役づくり・シーンのポイント~ 二人の関係は、上下関係ではなく、同じB級映画制作会社につとめる「同僚」「仲間」です。 憎みあってケンカしているのではありません。 ~設定~ 二人が座っているのは、音の編集室「MAルーム」です。 前のスクリーンに映像を流し、見ながらの会話です。 今はデジタルなのでこんなかんじ。 映画「ミッドナイトクロス」より。 当時はフィルムでアナログなので、こんなかんじ。 今も昔も、音効さんは、たまに、風の音やら川の音やら、ナマの効果音(SE)を自ら録音しに行きます。 Take1とTake2、つづけてご覧ください。 〇音効:ちあきさん / 監督:じんさんーTake1・Take2 〇音効:ようこさん / 監督:じんさんーTake1・Take2 ・Take1は肩慣らし。相手役の演技をさぐりながら、自分の演技を固めていきます。 ・Take2では、よりスムーズなやりとりになっています。 ここで出したアドバイスは、「前にあるスクリーンをなるべく見て会話してください」です。 ~アドバイスの理由~ リアルなMA室でこういう状況では、みんななぜか、スクリーンを見ながら話しているから。 また、2人とも、同じところ1か所に目線を向けて会話している方が、画に面白みが出るから。 (スクリーンには、シャワー中のおねーさんが悲鳴をあげている画が一時停止になっているはず) ・ちあき音効さんは・・・余裕でかわし、じん監督をなだめつかせているカンジです。 ・ようこ音効さんは・・・さばさばっとかわし、じん監督をなだめつかせているカンジです。 ・一方、じん監督は・・・けっこううろたえ、立ち上がり、八つ当たりぎみ。あるあるです。 この状況は、リアル映像業のあるあるです。 監督は、自分が選んだ女優さん、現場ではOK出したはずのセリフや音が、MA室で冷静に聞いてみると良くなかったということがたまにあり、自分のせいだとわかっていながら音効さんにむちゃ言ってごねます。なんとかせねばと必死。 音効さんは、やれやれと思いつつも、助けてくれます。 続いては、役を交代して、3テイク撮りました。 Take1は、肩慣らし。 Take2は、流れやタイミングをつかんで、こなれています。 Take3は、監督役に「やばい感を足して、うろたえてください」と要望を出しました。 〇音効:じんさん / 監督:ちあきさんーTake1・Take2・Take3 〇音効:じんさん / 監督:ようこさんーTake1・Take2・Take3 ・じん音効さんは、相手に合わせて、びみょーにリアクションを変えているのがわかりますか? おおまかな演技設計をたてつつも、相手のセリフの出方に合わせて、そのつど対応を変えられる余裕を残しておくことは、とても大事です。相手のセリフをちゃんと聞いている証拠。 ちあきさんとのTake1では、セリフ言い間違えたこと私が気が付かず止めませんでしたが、自然に会話が進行してます。 ・Take3のちあき監督は、ほぼ逆ギレで、自分がやらかしといて、音効さんを責めています。 でも自分のせいだとわかっているため、ラストは自分自身に笑っちゃっています。 ・Take3のようこ監督は、あちゃーこんなはずじゃなかったのに~と、やらかした自分にお手上げ状態。 やだもう私ってば、どうしよ~。ラストはもう人頼み。 どのテイクも、お3人とも、ほんとうにいるタイプのリアル感。 このお3人は、ご自分の演技を見て、ご自分で修正できる力をお持ちですので、アドバイスいらず。 どのテイクも成立しています。あとは、現場の監督さんの好みや要望に合わせるだけ。 ~3人の共通点~ 笑い方がうまい 「笑う」には様々な種類があります。「吹き出す」「爆笑」「失笑」「苦笑」「うれしくて笑う」「バカにして笑う」 シーンに合わせて笑い方を変え、何テイク撮っても、まるで初めてみたかのよう。 調整力 相手の出方によって、ご自分の演技を調整できてます。 もし、本当に「ミッドナイトクロス」の脚本をもらって、役作りをする場合・・・ 主人公の音効さん役は「同じMA室」と「悲鳴」が、この映画のキーであることを読み取り、この冒頭シーンののんきさと、ラストシーンの悲劇のギャップを意識するといいと思います。 やさしさ、職人気質、正義感は「悲しい過去あり」というバックグラウンドからきていることも重要なヒントです。 また、監督役は、シリアスなこの映画の中で、唯一、事件に無関係の笑えるポジションです。 冒頭のこのシーンと、ラスト、あとは真ん中に2回ぐらい登場しますが、 頭の中は「ヘタクソな悲鳴をなんとかせねば~」でいっぱい。 必死に取り組んでいるほど、観客は笑えて、一服の清涼剤となります。 ちょっとした役とはいえ、キーとなる「悲鳴」に直結し、さらに笑わすおいしいポジション。 脚本で、映画の中における役割をつかみ、準備しておくといいと思います。 おまけテイクは、女性二人で撮りました。 〇音効:ようこさん / 監督:ちあきさんーおまけテイク お二人とも、キャラ立ってていいかんじ。 ちあき監督、よっぱらいがからんでいるかのような演技。笑。この監督が出てくるのが楽しみになるかも。 ようこ音効は、監督のムチャぶりを、ほどよく流したり受けとめています。 ケンカにならない落とし方といい、一連の流れにメリハリがついていて、おもしろい。 映画「ミッドナイトクロス」では、高く評価されている演技があります。 それは、音効さん役ジョン・トラボルタの、 ガンマイク、オープンリールの扱い方、テープ編集をする見事な手さばき! 演技とは思えないぐらい、プロの手つき。 こういった「特殊な職業」の役を、俳優さんたちがどうやって習得したかを考えながら観てください。 また、映像的な余談ですが、 通称「デ・パルマカット」と呼ばれる、技巧を凝らした演出は、多くの監督たちが影響を受け今もマネしてます。 ・俳優とカメラマンの動きが、距離を保ったままシンクロしている1カット長回し。 ➡ピントがずれないように2人をロープでつなげて撮った「殺しのドレス」が有名。 ・スプリット・スクリーン➡ 2分割画面 ・スプリット・フォーカス➡ 半分焦点がちがう特殊なレンズフィルターを使った画。などなど。 スプリット・フォーカスは、手前と奥に、両方ピントが合っている、以下のようなありえない画。 当時のサスペンスな映画によく使われています。 ミッドナイトクロスでは、録音してるジョンボルタと、フクロウが、すごいインパクト。 そしてクライマックス! 本物の悲鳴は録れちゃったけど、カノジョは助けられず、ぼーぜんとする音効さん。 盛大な花火をバックに、2人をドリーで一周する美しいスローモーションは伝説のの名場面になってます。 ジョン・トラボルタの、ショックすぎて涙も出ない演技もうまいですが、 ドリーするカメラに合わせ、絶妙なタイミング顔の向きを変えている演技がにくいっ。 凝りまくりの監督に当たると、動きも制約されたり演技も苦労しますが、完成した映像を見ると、なるほど~!と思うことがあると思います。 こうした「演出技法」を知っておくと監督の意図が理解しやすいですし、むしろ積極的に演技を提案できるかも。 お3人とも、おつかれさまでした!
コロナで2年半ぶり再開のカメリハ、3人のプロの演技をどうぞ参考に! 次回は、11月17日(木)千種文化小劇場・練習室にて、 テーマは「グリーン・ブック」です。 お上品な人とがさつな人、ご自分の年齢、性別、個性に合わせて、 演じてみてください。
0 コメント
|
Vol.24「英雄の証明」
|