第11回めは、みんなの本業を生かした、個性が爆裂。テーマは「うそをつく・だます」。 カメリハ・オリジナル「ローズマリーの赤ちゃん」スタート! (左から)友人B:アンクラウン ローズマリー:みさき 夫:じん 友人A:Y 今回の映像は、諸事情により、youtubeでの一般公開を控え、カメリハ関係者のみの限定公開になります。ご了承ください。 というわけで、写真と解説のみアップいたします。 今回のテーマは、「ローズマリーの赤ちゃん」。 観客を、主人公を、心理的恐怖に追い詰める、巧みな演出のサイコホラーの名作。 ローズマリー役のミア・ファロー、あたまおかしくなりそうになりながら我が子を守る、迫真の演技が絶賛。観る側も、一体だれを信じていいのかわからなくなります。 立ち稽古で、セリフを覚えながら、役作り中のみんな。 ローズマリー役、みさきちゃん。(本業・俳優) 待望の赤ちゃんに恵まれ、幸せな家庭を築く予定だったローズマリーは、恐ろしい悪魔教に、わが子を狙われます。今回は、みょうに親切な周りの人々を警戒しだすシーン。 友人B役、アンクラウンくん。(本業・お笑いピン芸人) 本物の映画では、親切な近所のおじーちゃん=悪魔教の幹部 ですが、同年代の友達にしました。アンくんのキャラを生かした「にぎやかし系の友人」という設定で、赤ちゃんを狙います。 ローズマリーの夫役、じんくん。(本業・俳優) 本物の映画で、夫の職業は「売れない俳優」。悪魔教から、仕事の主役を持ち掛けられ、その引き換えに、妻に悪魔の子をはらませる、サイテーな夫。 そして、今回初登場! 友人A役に、Yちゃん(本業・モデルさん)が、初参加してくれました。演技初体験。 本物の映画では、親切な近所のおばーちゃん=悪魔教リーダー を、先輩友人Aという設定に置き換えました。頼もしいあねきキャラで、強引に赤ちゃんを狙います。 ●まずはTake1! ・Take1は、とりあえず撮ってみるか、ということで、ウォーミングアップ。 みんな、動きやセリフのタイミングをつかみながら、やってみました。 私のカメラもぐだぐだ。 ・このTake1の映像を実際に観たあと、みんな、爆裂。 俳優、お笑い、モデルさん、お互いのいいところを取り入れ、アドバイスしあい、役作りしながら、あーでもない、こーでもない、もう一回撮ってほしい!と、 撮っては観てをくりかえし、8テイク! ●そして、完成版! あまりの出来の良さに、タイトル作っちゃった。 (前半はキープテイク、後半はラストのOKテイクを使って編集しました。 3人のインサートも、1カット増やしました。) ●みさきちゃん いつも、よーい、スタート! とともに、すこんっと役に切り替わるみさきちゃん。 相変わらず、きちんと整理された演技。相手のセリフを聞いてのリアクション、表情、体の動きすべてが、コントロールされています。(徹夜明けとは思えません) 手は、わが子を守るため、さりげなくお腹に置かれています。 (ミア・ファローは途中で手を下ろしてますが、みさきちゃんは最後まで) お腹の上に置かれた手すらも、不安さを表す演技をしていました。 そして表情、お祝いしてくれる友人や、それらしいことを言う夫に笑顔で対応しながら、「なんかヘンだわ」という、不安な表情が、絶妙なタイミングでおり交ざっています。 不安な目線の方向も、計算されています。 (下の写真:夫すら疑わしいため、目線は夫にすがるのではなく、ひとり孤独目線) ミア・ファローのあの演技は、23才という若さから、余計なことを考えず、 ただローズマリーという人物になりきって、できちゃった演技じゃないかと思うんですが、みさきちゃんもよく似たところがあります。 みさきちゃんは、シリアスな役でも、コメディな役でも、 本人が計画してやった演技と、役の人物が勝手にやった演技が、共存していてます。 カメラまわっている時は、別の人物が、みさきちゃんの身体を借りてしゃべっているように見えます。そして、カット!と同時に、別の人物はすっと消え、素の本人に戻ります。 すごいわ。 友人Aのゴーインな親切に、笑顔で対応。 気が進まないことを押し付けられ、笑顔のままうそをついています。 孤独で不安な目線。そして、最後まで手はお腹。 ●アンくん ・・・今回の、アンクラウンは、違う。 練習室入ってきた時から、すでに、かもしだすものが、違っていた。 な、なんか、ちょっと、プロっぽくなっている。 ・・・という前置きはさておき、映像を見ると、 まず、ずいぶん滑舌良くなって、セリフがはっきり聞き取れます。 自主トレの成果。 「たくらみがばれそうになるのを、そのキャラではぐらかして」と要望をだしたところ、 自分のキャラを生かして、強調してくれました。 いいヤツキャラが、ひとをだますと、どうしても出ちゃうギクシャク感が、何ともリアル。 「あ、やばい。ばれそう」という瞬間を、観るひとにはわかるように、みさきちゃんにはわからないように、ごまかす演技。 目線を泳がせてちょっと慌てたり、要所要所で、夫と妻をチラ見したり。 電話のようすをうかがい、満足げにうなずいているアンくんのリアクションが良く、それにみさきちゃん、じんくんのリアクションが、ぴったりきたため、インサートカットを追加しました。 <重要>すでにカット割りが決まっていても、リアクションがよいと、そっちの画を使う場合が、けっこうあります。たかが一瞬のインサートカットでも、観る人のキモチを共有できたり代弁したりすることがあるため。「今あの人のセリフだから、自分は映ってないな」と、油断しないようにね。 扱いずらい液体の小道具も、この完成版では、じんくんと自然なだんどりで、 使いこなしているっ。 (途中のテイクでは、水に集中しすぎてセリフ飛んでましたが、フツーそうなる。) ・・・なんか、デキすぎで、突っ込みどころないやん。ちっ。 いかにも、にぎやかし系のいいヤツキャラ。 さも、みさきちゃんを気遣っているような、このごまかしぶり。 以前も書きましたが、アンくんは、俳優さんではないので「別人」になる必要はないと思います。演技力うんぬんより「役に自分のキャラを生かす」演技が、芸人さんの特権。 「このヒト、何に出てても、こういうキャラなんだ」でいいんです。 そのキャラを必要とする作品があるからね。 なんか今回は、演技楽しんでます感があふれ出て、安心して観れちゃうやん。 その調子で、ライブ行ってこーい! ●じんくん 技術的なことは、あえて言うことはございません。 本人には失礼ですが、じんくんは「ウラのある悪い男」は、実にはまり役だと思います。 なぜかというと、素のご本人は、ウラもなく、ワルだくみするようなタイプでは、まったくないからです。もちろん外見のイメージも。 だから「ギャップ」のある役は、演技に注目されやすい。 「やさしい笑顔と、ワルだくみの表情を、交互に入れて」と要望を出したところ、 これまた、絶妙に入れてくれました。 本物の映画でも「もしや、このやさしい夫までグル?」と、におわせているため、 観るヒトの心は、不安でざわつき、真相を知ってガクゼンとします。 つまり、このポジションの役が、「だます相手」は、 妻のローズマリーだけではなく「映画の観客」そのものです。 ガクゼンとさせるのに、じんくんの持って生まれた「商売道具(顔立ちやルックス)」と、真逆なイメージの役は、ギャップが激しく、効果絶大。得だわー。 以下、写真4連発。 「ただいまー」いかにも、やさしげな良き夫。見よこの笑顔。 悪魔教の産婦人科に、妻を渡せるよう、電話のようすをうかがう、ひどい夫。 妻がだまされているのを確認する、冷酷な夫。 妻を思いやってます風、この笑顔。サイテー。 「ひどい」「冷酷」「サイテー」と連発しましたが、演技で、観客にそう思わせたら、 こっちのものです。 「だます」も、 その心情をあらわす、口元の上げ方とか、目つきとか、顔の角度とか、息の仕方とか、 細かいところは、名優さんたちを研究していけばよいと思います。 「ローズマリーの赤ちゃん」は、この夫が、映画の中で重要な役割を果たすため、 監督さまたちは、きっと、 ・ワルだくみ表情と、やさしさを、交互に出して伏線をはり、観客をまどわせたい。 ・ワルだくみ表情はひかえて、伏線はらず、観客を一気に突き落としたい。 などと、いろんな演技の要望を出すことでしょう。演出意図はさまざま。 カメリハは2時間の映画ではなく、予告編のシーンだけを演じてもらうため、 あえてはっきり「やさしさ」「ワルだくみ」の表情を分けてもらいました。 (じんくんや、みさきちゃんレベルだと、こうした意図さえ、はっきり告げておけば、どっちでも対応してくれます。) こういう、ギャップのある役、どんどんくるといいね。 余談ですが、 長いまつげでキュートなラティーノ顔、メキシコ俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルも、 残酷冷血で、心のゆがんだ、サイテーな男を、ギャップを生かして演じています。 ・「アマロ神父の罪」 ・「キング ~罪の王~」 宗教的にも、超タブーなこの2本の映画で、ガエルくんは自分の「商売道具」をフル活用した演技で、映画にすごい効果をもたらしました。 効果ありすぎて、上映禁止騒動があったらしい。 ストーリーもさながらですが、カレが演じたからこそ、だと思います。 ブラピだったら、そこまで騒ぎにならないと思う。(←でた、ブラピぎらい) ガエルくん、かなりの演技派なのに、そこはけっこうスルーされ、 別にこのヒトじゃなくてもいいんじゃないの?という役も多いため、 この2本観たとき、キタ!と思いました。 ●Yちゃん 現役のモデルさんで、テレビにも出演し、カメラも慣れてるYちゃん。 初演技とはいえ、やっぱ、プロは違います。 滑舌も良く、姿勢の良く、立っても座っても画になるポーズは、本業のたまもの。 立ち位置や、カメラのサイズや方向もよくご存じで、カメラワークも助かるわ~。 「演技」そのもののは、みさきちゃんとじんくんから、アドバイスを受け、瞬時に理解し、みるみる変化。 しかも、私がOK~と言っても、「いや、もう一回やらせてください!」と自己NG出し、 プロ意識が高いっ。 GS(グループショット)で、こういうヒトがいると、みんな自分の事のように、 「よしっ、もう一回やろっ!」となり、全体の完成度が、メキメキ上がってきます。 <重要>カメリハに参加してくれるみなさんは「えー、もう今のでいいじゃん」と言うヒトが、今だ、一人もいないのが、誇らしい。 本当の現場には「もういいじゃん」というヒトはいます。俳優さんだけでなく、スタッフも。さまざまな制約があるからこればかりはしょうがないです。 だからここで、みんな気が済むまでやってください。 というわけで、初演技なのにいきなりセリフ多く、難しい超ワルの役を、 「サバサバ、テキパキあねきタイプ、断りずらいセンパイ」風に演じてくれました。 Take1と、完成版を比べてみれば、説明は要りません。 ちなみに、完成版の1Sは、一発OKです。 とりあえず「演技初心者」向けのアドバイスとしては、 ・ふだんから滑舌よく、テンポよくしゃべれるひとは、 セリフは、ふだん話す口調より、ちょっとゆっくりめに丁寧に言うと、間もでき、演技にも余裕ができます。 例えば「あ、高原さんも驚くわよ」を、「あ」で、目線や手を使い、思い出したしぐさの演技を入れるなど。 ・相手のセリフを聞いて→ココロが動き→カラダや表情が動き→セリフを言う、という順序を常に心がければ大丈夫。みるみるできてました。 撮影現場では、何べんも何べんも、まるで初めて聞いたかのようにリアクションしなくちゃいかんですが、ベテランでも、苦労してますから大丈夫。 ・監督によって、出される要望は違いますが「対応できる」ことが大切です。自分をなくすのではなく、役を自分の中で変換し、あとは、それぞれの監督の意図を聞いてみてね。 初演技とは、思えんやんっ。 それでは最後に、映画「ローズマリーの赤ちゃん」の予告をもう一度。 みんなお疲れさまでした! そして、今回、高原靖典先生は、ドラマのロケで、急きょお休みとなりましたが、 じんくん、みさきちゃん、きっちり演技指導してくれました。 あらためまして、ふたりとも、ほんとに助かったわ~。ありがとうございました。 アンくんも、盛り上げてくれて、ありがとう。 Yちゃん、また来てねっ。 次回は、2018年2月2日(金) 「ライオン~25年目のただいま~」です。 演技のテーマは、衝撃を受ける、動揺する。 1S、セリフほぼなしで、表現する演技に、挑戦してください。
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Vol.24「英雄の証明」
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